一応ホームページでブログの欄を作っちゃったので、ふと思ったことなどをごくたまに書いてみます。
最近思うこと、音楽の「本質」と「手段」(2021.11.16)
今年の夏は、まだまだコロナが猛威を振るっている中、僕の編曲作品のデータ販売をオンラインで始めたり、久々に日本でリサイタルを開催したり、と自分の人生や音楽の発信の仕方が大きく変化しました。
最近は、コロナの影響でコンサートが開催できなくなったことが一因なのか、クラシックの音楽家たちの中にも、YoutubeやTwitterなどを使って活動する人も増えてきました。かく言う僕もたくおんTVをお手伝いしたり、自分のチャンネルに演奏動画を投稿してみたりしています。
そんなこの頃ちらほら目にするようになったのが、「Youtubeなどの新しい情報発信ツールを使用することでクラシック音楽の本質が損なわれてしまうのではないか?」という意見。
今日はこの意見に対して僕の個人的な見解を書いてみようかと思います。
結論から言うと、この意見はYoutubeという「ツール・手段」と音楽の本質を探究するという「目的」がごっちゃになってしまっていると思うのです。
そもそも音楽の本質とは何か?と考えたとき、僕は「音という現象を使って、時間を造形し、その造形された時間によって人の精神に影響を与えること」なのではないだろうかと思います。
ではこの音楽の「本質」と、それを人に伝える「手段・ツール」の関係について、これまでの音楽の歴史を振り返るとどうでしょうか?
例えば、印刷技術が発明されたとき、それまでの音楽の受容の在り方は一変しました。音楽は楽譜という「ツール」によってそれまでより多くの人の手へと移りました。また録音技術が発明されたときは、音楽はさらに多くの人の耳へと届けられるようになりました。
またピアノという楽器に目を移してみると、様々なメーカーが金属のフレーム加工などの新しい技術を取り入れながら、鍵盤はより広く、より大きな音を鳴らせるように、この楽器は長い歴史の中で進化してきました。
しかしここで着目してほしいのは、これらの技術革新によって上記の音楽の本質を探究するという「目的」が変化していない点です。
これはあくまで「音を書く」ということに少し携わる者としての考えですが、音楽の形式やスタイル、編成といったものも少し技術というものに似ていて、「手段・ツール」の一種なのではないでしょうか?
音楽の歴史の話に戻ってみましょう。
形式、~派、演奏の形態というものは歴史を通じて変化してきました。しかしここで僕がオモシロイと感じるのは、それらの「器」に内在する「テーマ」が変化していない点です。それらはどの時代を通しても常に、愛や死といった人間にとって普遍的なものであったと思います。
わかりやすい例えをすると、コーヒーを注ぐ「器」は変化していますが、コーヒーという
「中身」は変化していない、という感じでしょうか。
では、「新しいツールを用いることで音楽の本質が損なわれる」という最近の意見はなぜ生まれたのか?
それは、新しいツールを用いたことで音楽の本質が損なわれているのではなく、そもそも本質を欠いた音楽を新しいツールで発信していることがある、というのが原因ではないでしょうか?
これはたしかに非常にマズイことですが、これは「手段」に問題があるのではなく、単純に演奏者の問題です。
僕が音楽の未来にとって一番危険だと考えることは、音楽を発信する新しい「手段・ツール」に問題があると勘違いすることで、逆に音楽の「本質」ではなく、従来の方法をとるべきだ、という風に「手段」に深くとらわれてしまうことです。
今、コロナによって音楽の発信の手段は大きな変化を見せていると思います。YoutubeやTwitterなど、音楽家にとって新しい発信の手段は今後も増えていくことでしょう。
実は、僕は機械を扱うのが苦手なのですが(嫌いではありません)、YoutubeやTwitterなどを最近使うようになったことで、知り合いからは少し意外だ、そういうものを使う人とは思わなかった、などと言われたりします。
しかしコロナの影響でコンサートなどの演奏の機会を失ったことは、僕にとって音楽の「本質」と「手段」についてこれまでより深く考えるきっかけになりました。
僕はまず、音楽を発信する「手段・ツール」が大きく変化する時期が来ている、と時代について考えました。そしてそこから音楽の「本質」こそが重要であり、それは「手段」によって変化するようなしょうもない代物ではないからこそ、新しい技術を使って発信しなければならないのだ、という考えに至りました。
これが今、僕が新しい「手段」を使って音楽を発信している理由です。
音楽を人に発信する「手段・ツール」は時代とともに変化しても、「本質」を欠かない音楽を発信するという責任感を感じつつ、まだまだ使い方は未熟ではあるものの、今後もYoutubeやTwitter、Instagramなどの新しい媒体を用いて、これまでより多くの方に音楽をお届けできたら、と思います。
ブログはごくごくたまに書いてみようと思います。日常系のしょうもない感じので良ければ、Instagram、Twitterのほうに、ふらっと来てみてください。↓